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ガーナとマラウイでのマラリアワクチンRTS,Sの導入に貢献

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By Access and Delivery Partnership

ガーナ保健局の医療従事者が実施した集団予防接種では、その他の通常ワクチンとともに、RTS,Sワクチンの接種も行われました。写真:Ghana Health Service

マラリアは、世界各地で何百万人もの人々を脅かし続けています。アフリカはマラリア症例全体の95%、マラリアによる死者全体の96%を占めるなど、マラリア患者数において不釣り合いな割合を占めています。最も弱い立場に置かれているのは5歳未満の子どもで、アフリカ地域でのマラリアによる死者の80%を占めています [1]。

幸いなことに、マラリア対策には新しい強力なツールとなる「RTS,S」と呼ばれるワクチンが登場しました。このワクチンは、マラリア原虫の中でも致死率と感染力が最も高い熱帯熱マラリア原虫に対して効力を発揮します。

このRTS,Sワクチンは最大でマラリア症例全体の39%、重症例の29%を予防できることが研究で実証されています[2]。

世界保健機関(WHO)は2021年10月、サハラ以南アフリカやその他の地域の子ども達にRTS,Sワクチンの広範な投与を勧めるという画期的な推奨を行いました。

この推奨はガーナ、ケニアおよびマラウイにて「マラリア ワクチン実施プログラム (Malaria Vaccine Implementation Programme: MVIP)」により実施された、4回接種型のRTS,Sワクチンの展開を評価するパイロット プログラムの調査結果を参考としています。

MVIPは、ガーナ、ケニア、マラウイの保健省のリーダーシップの下で実施された、定期的な全国予防接種プログラムを通じて、RTS,Sワクチンの導入に関わる調整を実施しました。

出典:Fidel Zavala, ‘RTS,S: the first malaria vaccine’, The Journal of Clinical Investigation. 2022;132(1):e156588の図を基に作成。

出典:Fidel Zavala, ‘RTS,S: the first malaria vaccine’, The Journal of Clinical Investigation. 2022;132(1):e156588の図を基に作成。

MVIP の取り組みへの貢献として、新規医療技術のアクセスと提供に関するパートナーシップ(Access and Delivery Partnership:ADP)は、ガーナとマラウイにおいて新しいRTS,Sワクチンの効果的な導入を促進することを目的とした技術支援を提供しました。

ガーナでは、国立ガーナ健康科学大学の主導により、国内での新規医療技術の導入と提供において重要な役割を果たす国家機関の能力ギャップを評価し、これに取り組むため、「ガーナにおける新規ワクチンの持続可能なアクセスと提供(SAVING)コンソーシアム」が設立されました。RTS,Sワクチンの試験的展開は、主要な国家機関間の統合的な計画策定とマルチセクターの調整を導入する機会となりました。

ADPは、SAVINGコンソーシアムがガーナ食品医薬品局、保健省、ガーナ保健局をはじめとする国内のステークホルダーを結集して、能力構築と組み合わせた実装研究アプローチを採用し、新規マラリアワクチンを全国で効果的に導入する際の実装面、運営面での障害を解消できるよう、支援を行っています。 

ガーナにおけるRTS,Sワクチンの展開にあたっては、地区行政官がワクチンに関するデータを検証し、職員を指導するための監視と監督を担当しました。写真:Ghana Health Service

ガーナにおけるRTS,Sワクチンの展開にあたっては、地区行政官がワクチンに関するデータを検証し、職員を指導するための監視と監督を担当しました。写真:Ghana Health Service

ADPはまた、SAVINGコンソーシアム向けのデジタル通信プラットフォームの整備も支援しました。これによって、コンソーシアムのメンバーはオンラインで、統合的な計画策定や調整、能力構築を実施できるようになっています。

国立ガーナ健康科学大学保健研究所 所長のマーガレット・ギャポン教授は「ADPによるアプローチは、各国において多様な機関を結びつけ、これらの機関が共通の課題に取り組むことを可能にしている」と語り、次のように付け加えています。

「ガーナでは、ADPが支援するSAVINGコンソーシアムを通じて、医薬品安全性監視(ファーマコビジランス)および関連分野の実装研究能力を構築し、新規医療技術へのアクセスと提供に向けた課題が特定され、対処されるようにしています。私たちはさまざまな形で、国の医薬品政策と実施計画を見直し、安全性の監視・対応能力を強化するための支援を受けてきました。」
マーガレット・ギャポン氏 写真:edctpforum.org

マーガレット・ギャポン氏 写真:edctpforum.org

マラウイでは、国家マラリアワクチン・プログラムによりRTS,Sワクチン向けに開発された医薬品安全性監視メカニズムを活用し、ADPは医療システム全体の医薬品安全性監視システムの拡充を支援しました。また、規制制度の強化に対する幅広い支援の一環として、薬局・医薬品規制当局と連携し、国家医薬品安全性監視センターの設立やその安全性監視力の強化、医療従事者向けの報告経路とツールの改善を実施しました。

ガーナとマラウイでRTS,Sワクチンの導入と普及が成功すれば、5歳未満の子ども達の年間100万人以上の発症を回避し、約4,000人の死亡を防げる可能性があります[3]。もし、このワクチンがサハラ以南のアフリカに普及し、マラリア感染率の高い地域に暮らす子どもたちに投与されれば、年間で最大3,300万人の感染と[4]、9万6,400人の死亡[5] を回避できる可能性もあります。

ADPパートナーであるTDRの科学者、コリーヌ・マール博士は、「RTS,Sワクチンを広範囲に普及させることは、各国のマラリア対策プログラムにとって、大きな課題となりかねません。ガーナとマラウイから得られた教訓は、他の国々がこうした課題に対処し、ワクチンの大規模な導入に備えるうえで、貴重な意味を持つこととなるでしょう。ワクチンの安全性監視と、保健省の実装研究能力強化に向けたADPの活動は、ワクチンの普及促進を支援することになります」と説明しています。
コリーヌ・マール氏   写真:International AIDS Society/Steve Forrest/Workers’ Photos

コリーヌ・マール氏 写真:International AIDS Society/Steve Forrest/Workers’ Photos

アフリカ全域でRTS,Sワクチンの導入が進む中で、ADPはガーナとマラウイの経験から学んだ教訓を、他国のマラリアプログラムと共有してゆきます。

またMVIP による RTS,Sワクチンの展開から得られた教訓は、全世界の低・中所得国での新型コロナ・ワクチン接種プログラムを含め、その他ワクチン・プログラムの計画策定と実施にも大いに参考となることでしょう。


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