インドネシア、ジャカルタの病院で、肺のレントゲン写真を見る患者。写真:Fauzan Ijazah/UNDP
長足の進歩は見られているものの、結核は毎年150万人の命を奪い続けていると見られ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に次いで2番目に死者の多い感染症となっています[1]。インドネシアでは、結核は死因の上位を占め、2020年にはおよそ10万人が死亡したといわれています[2]。
結核は結核菌という細菌が肺に感染することで引き起こされる病気です。近年は、既存の治療薬に耐性を示す新たな株も生まれてきました(薬剤耐性結核またはDR-TBとして知られています)。薬剤耐性結核は、衰弱しやすく、命さえ奪いかねない症状を引き起こすため、より長期の集中的な治療を要します。
結核は、患者とその家族を壊滅的な経済的困難に陥らせる可能性があります。政府は無償の結核検査キットや医薬品を提供しているものの、所得の喪失と自己負担分(旅費や以後の通院、入院、サプリメント食品など)は、結核患者一人当たり169米ドル程度に上るおそれもあります。薬剤耐性結核患者については、病気の重さや治療期間の長さ、それによる所得の喪失によって、こうした費用負担が一人当たり最大で14倍の2,342米ドルにも上りかねません[3]。
薬剤耐性結核の効果的な診断と治療に対する障壁は多次元にわたり、社会的要因の影響を受けます。その中には、検査や治療を受ける妨げとなる結核に対する偏見やメンタルヘルス、貧困、住宅、失業などの問題が含まれます。
インドネシアの国家結核プログラムは、薬剤耐性結核への対策という点で、顕著な進歩を遂げつつあります。2017年には、全34州の360か所に薬剤耐性結核治療施設、2,300か所にそのサテライトサイトを設置し、全国カバー率100%を達成しました。
世界保健機関(WHO)は2020年、薬剤耐性結核の治療法として、約9~11か月程度で完了する全経口治療を推奨しました。期間が24か月にも及びかねないばかりか、毎日の注射を必要とする従来型の薬剤耐性結核治療と比べた場合、この新たな投薬法は期間が短く、服薬も簡単で、有効性も高くなっています。
しかし、この新たな治療法も、多くの患者にとって難題であることに変わりはありません。経済的負担に加え、吐気や眠気、抑うつ、精神病、腎障害、聴力喪失など、幅広い副作用も伴うおそれがあるからです。
まだ多くの課題が残っています。2022年1月から9月にかけ、インドネシアでは8,042人の薬剤耐性結核患者が確認されましたが、そのうち治療を受けている患者は約54%に過ぎません[4]。これはおそらく、薬剤耐性結核に関連する幅広い経済的、社会的課題により、障壁が生じているためだと見られます。
新規医療技術のアクセスと提供に関するパートナーシップ(Access and Delivery Partnership:ADP)は特に、新しい結核治療薬の安全な普及を確保する監視システムの構築を支援することにより、インドネシアでの結核対策に貢献してきました。
2014年から2016年にかけ、ADPは国家結核対策プログラム、国家医薬品食品監督庁および公立病院に対し、薬剤耐性結核短期治療計画の一環として導入された新規医薬品ベダキリンの副作用を検知し、適正に管理する能力を高めるための支援を行いました。その中には、医療従事者と薬剤師約200人を対象とする「積極的安全性監視」訓練が含まれています。これは、治療中の患者に積極的かつ体系的な臨床検査評価を行い、確認された有害反応とその疑いのある事例を検知、管理、報告するという作業です。
ADPは2021年、薬剤耐性結核治療薬の安全性監視に関する包括的な現状分析を行いましたが、国家結核対策プログラムはこれを基に、監視システムの弱点是正をねらいとするアクションプランを策定しました。ここで得られた教訓は、短期の全経口治療計画を採用する他国の結核対策プログラムにも役立つことが期待されます。
ADPはまた、保健省と連携し、良質で安価な医薬品の選定と調達、および結核対策プログラム実施のギャップに取り組む医療システムの研究など、他の関連システムの強化にも取り組んできました。保健省の財務管理情報システム、人的資源および報告体制を強化するためのUNDPからの技術的支援は、同国のHIV、結核およびマラリア対策について、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(略称:グローバルファンド) からの2018年から2023年を対象とした資金援助の獲得にも貢献しました。
National Institute of Health Research and Development, Ministry of Health, TDR and ADP, ‘National strategy for implementation and operational research to support prevention and control of tuberculosis, malaria and neglected tropical diseases 2016–2019’, 2 March 2017
ADP, ‘The ADP Public Forum, Jakarta, Indonesia’, 11 January 2017
© 2026 Access and Delivery Partnership