最も将来性の高い医療介入策でさえ、地域特有の環境で使われる際には障壁に直面し、望ましい結果を出せないおそれがあります。社会行動的要因や物流面での課題、財政的制約、極端な環境条件など、様々な不確定要素が関わってくるからです。
そういった中、実装研究は、医療従事者が成功の可能性を最大限に高めるうえで、ますます欠かせないツールとなってきています。
実装研究では、ボトルネックの特定のほか、重要な要素として、医療システム全般を強化しながら医療サービスの提供を充実させるためのソリューションを特定します。この種の研究は、ワクチンや医薬品、政策、実践といった保健介入が研究室や臨床試験の環境を出て、現実の世界でも有効性を保てるかどうかを判断することに役立ちます。
新規医療技術のアクセスと提供に関するパートナーシップ(Access and Delivery Partnership:ADP)は、医療従事者の養成や、実装研究ツールキットと呼ばれる革新的な学習リソースの開発を通じ、医療システムのさまざまなレベルで実装研究の活用を推進してきました。
2014年に熱帯病医学特別研究訓練プログラム(TDR)によって最初に開発されたこのツールキットは、医療サービスの提供者や研究者、行政担当者に対し、研究課題の設定や資金申請書の作成、データの収集と分析、研究結果の共有を含め、実装研究プロジェクトの設計と計画に関する包括的な手引きを提供する自主学習ツールです。
ADPは、2か国語(フランス語と英語)のオンライン化などの、ツールキットの機能強化を支援しました。2022年には、実装研究プロジェクトや関連する提案書に、分野を超えたジェンダー的視点が取り込まれるよう、研究者の能力強化をサポートする新たなモジュールも追加されました。さらには、ツールキットの利用を最大限に広げるため、バーチャル学習やハイブリッド学習に最適化された最新の機能性を追加した形で、全面デジタル化も進められているところです。
このツールキットと研修の受益者としては、疾病対策プログラムの実施担当者や地域・中央病院の職員、学術研究者などが挙げられます。マラウイとガーナからの参加者は、下記のような経験の共有を行っています。また、引き続き幅広い研究者ネットワークの構成員として、国や地域を越えたカウンターパートとの技術的交流からも利益を受けており、これがやがては実装研究アプローチを充実させるとともに、ツールキットの将来的な強化にも寄与することとなるでしょう。
「実装研究ツールキットを活用した実装研究研修コースに参加したことで、保健介入実施に際する分析能力がつきました。コミュニティにどのような医療措置を提供する場合でも、最初から最終目標を考えられるようになりました。」
「実装研究ツールキットのおかげで、実装科学と質的改善プロジェクトをしっかりと理解し、区別できるようになりました。ツールのデータ監視についての推奨事項を活用し、生化学検査部門の振り返りもできるようになりました。今ではこのデータを使って、パフォーマンスを改善し、国家保健ラボサービス(NHLS)の外部品質管理に参加できるよう努力しています。また、実装研究ツールキットは、私たちの品質改善プロセス(QIPs)に欠かせない役割と影響力を持つステークホルダーを特定し、これらと連携するうえでも助けとなりました。これによって、生化学検査室と臨床部門間の連携も促進され、改善されました。」
「プロジェクトの成果を生物学的インパクトから捉えるだけでなく、実装の決定要因と実装成果という点からプロセス全体を眺め、質的改善の参考とできるようになりました。今ではパートナーと連携する際、実装プロセスにより大きな注意を払い、その質の高さも確保するようにしています。」
「実装研究に関する研修のおかげで、特に顧みられない熱帯病の分野において、構造化されたプロセスを用い、医療システムの問題となっている障害や障壁を特定するのに役立ちました。介入研究の開発と実施も成功させることができました。実装研究の研修はまた、適切なステークホルダーを特定して連携するとともに、地域内での私たちの介入研究の潜在的財源を特定することにも役立ちました。(研修は)通常のサービス提供システムの問題点を洗い出すという私の日常業務の改善につながり、私は獲得した能力を活用して、サービスの問題点をいくつか解決することもできました。今では実装研究の専門家としての知識と能力、経験を備えたうえで、調査の実施に実装研究を活用し、プロジェクトに対する国際的な研究助成金を獲得できるようになりました。」
「実装研究に関する研修と指導は、修士課程の研究の設計と実施に欠かせない役割を果たしました。実装研究に関する研修を受けたことによる長期的なインパクトには、特筆すべきものがあります。現在は、私が得た知識と能力を活用し、ガーナのインフォーマル経済における母性保護規制の実施に関するギャップと促進要素を把握するための調査の設計に向け、実装研究を行っているところです。」
「実装研究に関する研修は、ガーナ保健局政策立案監視・評価部の医療システム開発担当官兼医療研究官としての私の理解を体系的に深めました。より大きなコミュニティが関わる案件について、エビデンスの実証と、代替的な提言の提示がいかに重要であるか認識するようになりました。」
TDR, ‘TDR Implementation Research Toolkit’
TDR, ‘Massive open online course (MOOC) on implementation research: infectious diseases of poverty’
Africa Regional Training Centre, ‘Training Programmes: Principles of Implementation Research’
TDR, ‘Training course on ethics in implementation research: Participant’s guides’, 29 June 2019
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