写真:Uniting Efforts for Innovation, Access & Delivery
世界の最貧層に不当に大きな影響を及ぼしている顧みられない病の多くに対処するために必要な新規医療技術の開発については、これまであまりにも長い間、関心も資金も欠如した状態が続いてきました。また、医薬品やワクチン、診断検査機器が開発されても、これを最も必要とするコミュニティには届かないことが多くあります。複数の危機が積み重なっている世界の現状は、顧みられない病への投資拡大へのさらなる課題を提起しています。
研究開発資金提供者やイノベーター、政府、市民社会など、医療技術のイノベーション、アクセスおよび提供に関与する関係者は、この課題に取り組むうえで果たすべき重要な役割を担っています。
新規医療技術、アクセスと提供のための協働(Uniting Efforts for Innovation, Access and Delivery)は、研究開発やイノベーションのプロセスと、アクセスと提供に関するイニシアチブの両方にとって参考となる新たなツールと戦略に向けた対話と協力の促進を目的に、これら重要なステークホルダーの結集を図るグローバル・プラットフォームです。このプラットフォームは日本政府、国連開発計画(UNDP)が主導する新規医療技術のアクセスと提供に関するパートナーシップ(Access and Delivery Partnership:ADP)、そして公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)の共同イニシアチブとして発足しました。
「協働」プラットフォームのねらいは、低・中所得国の顧みられない病や患者のために、新規医療技術の提供準備に向けた共通のビジョンを定める世界的なフォーラムを提供することにあります。
低・中所得国で新型コロナ・ワクチンへのアクセスが依然として不平等となっていることは、医療技術の開発における国際協力と、それを提供するための堅牢な医療システムへの投資が、公平で迅速なアクセスを実現するために一体化しなければならない必要性を示しています。イノベーション、アクセス、提供という一連のプロセスに関与する主要ステークホルダー全体で課題を統合することは、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)とパンデミックへの備えの両方を達成するうえで欠かせない要素となるでしょう。
「協働」プラットフォームが取り組む優先課題の一つとして、医療技術へのアクセスとその提供を確保するための持続可能な財源の必要性が挙げられます。顧みられない病はこれまで長い間、国内外の資金調達から取り残されてきました。「協働」プラットフォームは2020年、顧みられない病に取り組む新規医療技術のアクセスと提供に向けた資金供与と資金調達の現状に関するディスカッションペーパーを発表しました。この文書は、顧みられない熱帯病(NTDs)対策の財源が先細りの傾向にあることを示すとともに、幅広い革新的で持続可能な資金調達戦略を明らかにしています。
「協働」プラットフォームのパートナーはこの提言を受け、世界保健機関(WHO)の顧みられない熱帯病対策局と共同で、NTDs対策の資金調達オプションを改善することを目的とした投資事例作成のためのツールキット開発に取り組んでいます。
ガーナ保健省は、国内でハンセン病、オンコセルカ症、リンパ管フィラリア症という3つの優先疾患の投資事例作成の試験的実施に同意しました。この投資事例は、同国内でこれら優先NTDsに関するエビデンスに基づく費用対効果の高い対策へ投資するための経済・開発上の合理的根拠を示す一助となることでしょう。また、新たな財源を発掘するとともに、政府やドナー、その他のパートナーが国の優先課題に沿った資金調達を重視するきっかけにもなるでしょう。
グローバルヘルスの財源が減少している現状において、各国の投資事例作成は、国内の財源を含め、新たな資金調達の機会を発掘、獲得するための重要な手段となります。ガーナでの投資事例作成の試験的実施は、他の国でも応用・実施可能なモデルを提供し、顧みられない病気に関する十分な情報に基づく資金調達の決定を促進し、WHOの「NTDsロードマップ2021-2030」の実施にも貢献することが期待されています。
さまざまな関係者間の調整と同様に、計画と明確な政策の欠如は、医療技術へのアクセスと提供を阻む重大な課題として認識されています。「協働」プラットフォームは、研究開発プロセスの初期段階においてのアクセスと提供に関する計画策定を改善するための教訓を抽出するための分析を行っています。低・中所得国の主要な資金提供者、イノベーター、ステークホルダー調査は、研究開発プロセスの中でアクセスに関する政策と実践を見直すための参考になるとともに、アクセス戦略の統合に向けた教訓やグッドプラクティスも明らかにします。
この研究の目標は、資金提供者、製品開発者およびアクセス関連のステークホルダーのコミュニティに対し、研究開発プロセス全体にアクセスの視点を取り入れるために採用できるさまざまなアプローチについて、情報を提供することにあります。製品開発者や資金提供者、アクセス関連のステークホルダーが、アクセス目標の達成方法について理解を深める能力を高めれば、誰しもの利益になることは明らかです。特定されたグッドプラクティスや成功要因が、アクセスと提供の現場の実情にイノベーション・プロセスを効果的に反映させるための具体的措置について考える機会を生み出すことが期待されます。
NTDs関連医療技術の調達と供給は極めて断片化されている状況であり、「協働」プラットフォームが取り組んでいるもう一つの分野でもあります。「協働」プラットフォームは、HIVや結核、マラリアなど、他のグローバルヘルス課題に取り組む技術の調達と供給から学べる教訓と、これをNTDsに応用できる方法について検討しています。
GHIT Fundの國井修CEOは、次のように指摘しています。「国際社会が共通善のために迅速に結集できることは分かっています。新型コロナ・ワクチンの開発でも、それは証明されました。いま必要なのは、アクセスと提供の視点を研究開発プロセスにも取り込むことです。アクセスと提供に投資し、研究開発から提供へのシームレスな移行を確保することが必要です。『協働』プラットフォームは、私たちが最初から整合性を確保するために力を合わせることができる新しい手段を提供してくれます。GHIT FundはUNDPや日本政府と連携しながら、この重要なミッションに引き続き取り組んでゆきます。」
Uniting Efforts for Innovation, Access and Delivery
Uniting Efforts, ‘Discussion Paper on the Landscape of Funding and Financing Opportunities for Access and Delivery of Health Technologies for Neglected Diseases’, 6 November 2020
Uniting Efforts, ‘Guidance Note: for the development of national investment cases for neglected diseases’, 28 October 2020
Uniting Efforts, ‘Challenges and opportunities for innovation, access and delivery of health technologies: Why a global dialogue? Background paper’, 30–31 January 2019
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